1. はじめに
皆様、はじめまして。徳柴農園の堀内と申します。
この度、私たちのブログを立ち上げることになりました。ここでは、皆様により一層私たちのお茶を楽しんでいただけるよう、無農薬栽培への取り組みやビジョン、そして日本の豊かな茶文化について共有していきたいと思います。
今回は、私たちが活動の舞台とする、600年の歴史を誇る八女茶について紐解いていきます。
2. 八女茶の歴史と魅力
「茶といえば八女、八女といえば茶」―― これは江戸時代に読まれた詩であり、この詩が物語るように、八女茶は日本茶の中でも昔から特別な存在です。
全国的に名高い八女茶は、実は私たちが活動する笠原地域が発祥の地なのです。その歴史は1423年にまで遡ります。栄林周瑞という禅僧が、中国の霊厳山寺での留学を終え、茶の種を日本に持ち帰りました。全国を巡った後、彼は筑後郡鹿子生村(現在の笠原地区)に到着します。ここで彼は、中国蘇州の霊厳山寺を彷彿とさせる風景に出会い、この地が茶栽培に最適だと判断しました。そして霊巌寺を建立し、禅の修行と茶の栽培・加工技術の伝承に尽力したのです。これが八女茶の起源とされています。
(霊巌寺と周瑞禅師)
その後、八女茶は数百年にわたって八女地域の山間地の主要産業として広がっていきました。お茶は本来、山間地の作物です。一日の寒暖差が大きく、ミネラル豊富な山の土壌が、上質なお茶づくりに適しているのです。中でも八女の気候や土壌は特に適しており、昔から高い評価を得てきました。
(笠原地区の山間地と、私たちの茶園)
現在、八女茶は日本の茶生産量の約3%を占めるに過ぎませんが、最高級茶としての地位を確立しています。日本国内の流通で最も単価が高いお茶が、まさに八女茶なのです。
3. 現在の八女茶の課題
しかし、近年の農業の変化により、八女茶、特に山間地の茶産業は大きな課題に直面しています。
農薬や化学肥料を主体とした現代の慣行農法の普及により、平地でも茶栽培が可能になりました。言わば、どこでも平均的なお茶が生産できるようになったのです。八女市でも、本来山間地の作物であるお茶が、標高の低い街中にも茶園が広がっているのをよく見かけます。
この変化により、多くの農家さんは平地に茶園を求めるようになりました。その理由は主に2つあります。1つは平地のほうがフラットで面積もたくさんとれて、作業効率と生産効率が良いこと。もう1つは、現在の茶業界では収穫が早いお茶ほど高値で取引される傾向にあることです。
さらに、お中元やお歳暮の文化の衰退、ペットボトル茶の普及により、国内の茶の消費量が大幅に減少しています。急須でお茶を淹れられない若者が増えているのも、大きな問題です。
これらの要因により、八女の山間地には廃業して放棄された茶園が目立つようになりました。近代化による人口流出も相まって、この地域の未来を担う若者が減少し、空き家も増加しています。600年の歴史を持ち全国随一のお茶どころとして発展してきたことを想像して、この地の現在の衰退を目の当たりにすると、胸が痛みます。
4. 徳柴農園の始まりとビジョン
このような状況を変えたい、まだお茶の魅力を知らない人々に広めたいという思いから、私は2017年にこの八女市笠原地区に移住し、お茶づくりを始めました。廃業された茶園を引き継ぎ、全て無農薬栽培に切り替えて、新しい形のお茶づくりに挑戦しています。
若い仲間も集まり、規模を拡大した結果、現在では笠原地区で最大の圃場面積を持つまでになりました。新参者の私がここまで来られたのは、皮肉にも、多くの農家さんが撤退していったからこそです。
(徳柴農園と仲間たち)
私たちのビジョンは「原点回帰によるV字復活」です。
600年前に始まり、500年以上にわたって発展してきた八女茶産業。近代的な大量生産を良しとし、農薬・化学肥料に依存し一時は爆発的に成長しましたが、現在は衰退の一途をたどっている八女茶産業。
この産業を未来に繋いでいくには、昔のやり方に立ち返る必要があると考えています。農薬や化学肥料は環境や土壌に負荷をかけ、過剰な肥料使用で増えた虫を害虫と位置付けて駆除するやり方は、生態系を破壊します。現在の危機的状況は、こうした農法の行き詰まりを示しているのではないでしょうか。
私たちは、この地の利を活かし、自然や動物界と調和する農法で、衰退しつつある山間地の茶産業を再び盛り上げていきたいと考えています。大きなピンチは、同時に大きなチャンスでもあるのです。
5. まとめ
本日は八女茶の歴史について紐解き、私たちの存在意義についてお伝えしました。改めて要点をおさらいします:
・八女茶は600年の歴史を持ち、恵まれた気候とミネラル豊富な土壌によって生み出されるお茶は、昔から高い人気を誇り、現在でも日本一の高級茶として位置づけられています。
・八女茶は今でも名声を保っていますが、近年の慣行栽培の普及により、本来の山間地で作られる本物のお茶は激減しています。茶産業全体の消費量減少という課題もあり、特に山間地の茶産業は危機的状況にあります。
・私たち徳柴農園は、この伝統ある地域でお茶づくりを行い、昔ながらの無農薬栽培で自然と調和する農業を実践し、この地の茶産業のV字回復を目指しています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
このブログでは今後も、お茶にまつわる様々な話題をお届けします。私たちの農園での日々の取り組みや、地域の茶産業を盛り上げるための活動についてもお伝えしていく予定です。
どうぞ、ゆったりとお茶を淹れながら、このブログをお楽しみください。
最後になりましたが、私たちの活動を応援する意味でも、ぜひお茶をご購入いただければ幸いです。現在、タイムセール中で全商品を30%オフにてご提供しています。(2024年7月15日12:00まで)
皆様とお茶を通じてつながれることを、心より楽しみにしております。
徳柴農園
代表 堀内